冬至は、一年でいちばん昼が短い日です。
この事実自体は、多くの人が知っていることでしょう。
ただ、それを英語で説明しようとすると、意外なところで手が止まります。
Winter solstice.
The shortest day of the year.
ここまでは出てくるのに、「なぜそうなるのか」を言葉にしようとした瞬間、英語が急に“理科っぽく”なってしまうのです。
けれど、実はそこに英語学習としての面白さがあります。
冬至は、語彙を覚えるための季節ネタではありません。むしろ、英語で構造を説明する練習素材として、とても優秀です。
冬至という言葉が示しているもの
英語で冬至は winter solstice と言います。
この solstice という単語は、ラテン語の sol(太陽)と sistere(止まる)に由来するとされています。
「太陽が止まる」と言われると、少し大げさに聞こえるかもしれません。もちろん実際に止まるわけではありません。
ただ、空を見上げたとき、太陽の高さがそれ以上低くならず、しばらく同じ位置にとどまっているように見える時期があります。その“見え方”を、そのまま名前にしたのが solstice です。
英語は、こうした観察された現象をそのまま言葉にする傾向が強い言語だと感じます。
冬至という季節の節目でさえ、感情や文化より先に、天文学的な視点が言葉に含まれているのが興味深いところです。
地球の傾きが、昼の長さを決めている

冬至に昼が短くなる理由は、太陽が弱くなるからではありません。
地球と太陽の距離が大きく変わるからでもありません。
理由はシンプルで、地球が傾いているからです。
地球の自転軸は、垂直ではなく、約23.4度傾いています(この傾きは tilt と表現されます)。この傾きによって、太陽の光が当たる角度が季節ごとに変わります。
冬至の日、北半球は太陽から最も遠ざかる向きに傾いています。そのため、太陽の通り道は低くなり、昼の時間は短くなるのです。
ここで起きているのは「太陽の元気がなくなった」ではなく、光の当たり方が変わったという話です。
英語でこの仕組みを説明するなら、次のような語彙がよく登場します。
- tilt(傾き)
- axis(軸)
- angle(角度)
- sunlight(太陽光)
「昼が短い」とは、どういう意味か?
the shortest day of the year
この表現はよく見かけますが、ここでいう day は24時間のことではありません。
英語で day は、文脈によって日照時間を指すことがあります。つまり「太陽が地平線の上に出ている時間」のことです。
冬至の shortest day は、24時間が短くなるという意味ではなく、明るい時間が最も短いという意味になります。
英語には、この感覚を支える表現がいくつもあります。
- day and night(昼と夜)
- daylight(日光、日照)
- daytime(日中)
「昼」を細かく切り分けて扱う英語の感覚は、冬至の説明でも役に立ちます。
なお、よりはっきり言うなら daylight hours(日照時間)という言い方も便利です。
南半球では、話が逆になる
ここで一度、視点を変えてみます。
冬至の日、南半球ではどうなるでしょうか。
答えは単純で、昼が最も長くなります。北半球が冬至なら、南半球は夏至に近い状態です。
つまり、winter solstice という言葉には、最初から「どの地域(どの半球)から見ているのか」という前提が含まれているとも言えます。英語でこの点を丁寧に扱うには、hemisphere という単語が欠かせません。
- Northern Hemisphere(北半球)
- Southern Hemisphere(南半球)
英語は、立場や位置を明示する言語だとよく言われます。
「世界共通の事実」を語っているつもりでも、実はどこから見ているのかが問われる場面が多いのです。冬至の話は、そのことをとても分かりやすく見せてくれます。
英語でまとめて説明するなら
では、ここまでの内容を英語で一段落にまとめると、どんな形になるでしょうか。暗記のためではなく、「こう説明できると気持ちいい」という見本として置いておきます。
The winter solstice is the day when the Earth’s axis is tilted most away from the Sun in the Northern Hemisphere.
Because of this tilt, sunlight hits the Earth at a lower angle, resulting in the shortest daylight hours of the year.
特別に難しい単語を並べているわけではありません。
ただ、因果関係と構造を理解していないと書けない英文です。
冬至を英語で説明するというのは、単語を訳して終わることではありません。仕組みを言語化することなのだと分かります。
終わりに:季節を英語で語れるということ
季節の話題は、雑談にも使いやすいテーマです。
- It’s getting colder.(寒くなってきましたね)
- The days are getting shorter.(日が短くなってきましたね)
こうした一言が言えるだけでも、会話は進みます。
ただ、冬至のようなテーマを少し深く理解すると、英語は単なる会話の道具ではなく、世界の見方を説明する言語になります。
地球が傾いていること。
その傾きが光の当たり方を変え、昼の長さを決めていること。
そして、それを英語はどのように切り取って表現しているのか。
冬至は、語学と理科が静かに交差する日です。だからこそ、英語学習者にとってちょうどいい題材なのかもしれません。
答えを知るだけなら、一行で済みます。
しかし、英語で「なぜ」を語れるようになると、言葉の奥行きは確実に広がります。
冬至は、その入り口として、ほどよい深さを持っています。


