アメリカ英語とイギリス英語には、発音、文法、語彙の使い方… さまざまな要素に多くの違いがあります。中でも日本人がまず気づきやすいのが 「単語そのものの違い」 です。
同じ英語なのに、まったく別の単語が使われたり、同じ単語でも意味が大きく違ったりすることがあります。
では、なぜこんな違いが生まれたのでしょうか? 背景にはいくつかの理由があります。
- 📜 背景にある理由
- ⚠️ 意味がズレる要注意単語(知らないと誤解される可能性有り)
- 📋 そのほかの差もまとめてチェック
- ✍️ スペルが違う代表パターン(覚えると一気に楽)
- 🗣️ 発音もセットで違うもの
- ✅ 中級者が意識すべきポイント(勉強のコツ)
- 📚 まとめ|単語の違いを知ると世界が二つ見える
📜 背景にある理由
- ① イギリス英語は“保守的な伝統”を重んじるイギリスでは、歴史ある言葉遣いがそのまま残りやすい傾向があります。特に食べ物や衣類などの昔ながらの生活文化に根付いた単語は変化しにくく、地域色も反映されます。
- ② アメリカ英語は“移民文化”でシンプル化が進んだアメリカは多民族国家であり、多言語の人々が英語を使う必要がありました。そのため、より発音しやすい、よりシンプル、より短い単語が優先される傾向が強く、語彙が簡略化・合理化された歴史があります。
- ③ 文化の違いが意味のズレを生む「休暇」「車」「地名」「食文化」など、生活スタイルの違いによって、単語の意味までズレてしまうこともあります。
こうした背景を知っておくと、後に出てくる単語の違いも「へぇ、なるほど」と理解しやすくなります。
⚠️ 意味がズレる要注意単語(知らないと誤解される可能性有り)
ここからは、アメリカ英語とイギリス英語の違いがもっとも顕著に表れ“語彙のズレ”を具体例で見ていきます。
1. pants / trousers(ズボン or 下着問題)
まずは定番の勘違いポイントから。
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
| pants | ズボン | 下着(パンツ) |
| trousers | (ややフォーマルな)ズボン | ズボン |
つまり、イギリスで I like your pants. と言ってしまうと、「あなたの下着が素敵ですね」と言っているように聞こえてしまいます。
イギリス英語で「ズボン」は trousers、「下着」は underwear(女性は knickers、男性は briefs)が一般的です。
この“pants問題”は、海外で最も誤解が生まれやすい単語として知られ、コメディーのネタにも使われたりします。。
2. chips / fries / crisps(食べ物の勘違いNo.1)
食べ物の呼び名は文化差が強く表れます。
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 | 意味 |
| chips | ポテトチップス | フライドポテト | |
| fries | フライドポテト | (細めの)フライドポテト | |
| crisps | (使わない) | ポテトチップス |
イギリスの fish and chips は「魚フライ+フライドポテト」です。
日本語で「チップス」が完全に米語寄りなのも、学校教育やメディアの影響ですね。
3. subway / underground / the Tube(地下鉄の呼び方)
地下鉄は、アメリカ英語とイギリス英語で大きく異なるだけでなく、国によって呼び方がさらに変わるため、中級者でも混乱しやすいポイントです。
| 地域/国 | 一般的な呼び方 | 補足 |
| アメリカ | subway | |
| イギリス | underground | 一般的な表現 |
| ロンドン | the Tube | ロンドン限定の愛称 |
| その他の多くの国 | metro | ヨーロッパ、アジアなどで広く使われる呼称 |
ロンドンで subway と言うと「歩行者トンネル?」と誤解される可能性があるため、英国では underground を使うともっとも自然です。
metro はヨーロッパ、アジア、中東など、非英語圏の多くの国で広く使われる表現で、英語話者同士でも国・地域の文脈によって呼び方が変わります。
例:
- アメリカ
Where is the subway station?
- イギリス
Where’s the nearest underground station?I’m taking the Tube today.(ロンドン限定のカジュアル表現)
- フランス・スペイン・トルコ・韓国など
Where is the metro?
日本での“メトロ”は?
東京メトロの影響で、日本人にも馴染みがありますが、英語圏(特に米英)では metro は“海外の地下鉄一般の呼び方”として理解されることが多いです。

ロンドンでは、Underground(地下鉄)に対し、Overground(オーバーグラウンド)という地上の鉄道網もあります。
これはロンドン郊外を結ぶ特定の路線ブランドで、地下鉄と対になる存在です。ロンドンでは「地下」と「地上」で交通機関の名称が分かれているのが特徴です。
📌 要点まとめ
subway= 米(英では主に歩行者用の地下道を指す)underground/Tube= 英metro= ヨーロッパ大陸など、多くの非英語圏で使われる呼称
4. holiday / vacation(休暇の感覚が違う)
アメリカでは vacation は「長期休暇(旅行)」のニュアンスが強いですが、イギリスでは長期も短期もすべて holiday が使われます。
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
| vacation | 長期休暇(旅行) | (使わない/長期休暇) |
| holiday | 祝日/短期の休み | 長期も短期も全部 |
holidays の意味が、アメリカでは「クリスマス〜年始の時期」を指すのに対し、イギリスでは単に「複数の休み」を指すなど、文化背景の違いが語彙に出る代表例です。
5. jumper / sweater / hoodie(服の呼び方)
衣類も違います。
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
| sweater | セーター | セーター |
| jumper | (使わない) | セーター |
| hoodie | パーカー | パーカー(ほぼ共通) |
| vest | チョッキ/ベスト | 肌着/ランニング |
この vest は、アメリカで「チョッキ」を指して使うと、イギリスでは「肌着」と誤解される可能性がある落とし穴です。
6. boot / trunk(車の荷物スペース)
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 | 意味 |
| trunk | トランク | (使わない) | 車の荷室 |
| boot | (使わない) | トランク | 車の荷室 |
例:Could you put this in the boot?(英)→ トランクに入れてくれる?
7. petrol / gas(燃料)
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 | 意味 |
| gas | ガソリン | (使わない) | |
| petrol | (使わない) | ガソリン |
ガソリンスタンドも gas station(米) と petrol station(英) になります。

では気体の方のガスは?
アメリカではこちらもgasです。
どうやって聞き分けれるかというと、文脈です。
発音は全く同じなので文脈から読み取ります。
8. biscuit / cookie(お菓子問題)
| 単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
| biscuit | 柔らかいスコーンのようなパン(食事系) | クッキー全般 |
| cookie | クッキー/チョコチップなど | (チョコチップ)クッキー |
アメリカで「biscuit」は食事系パンなので、イギリスの biscuit(サクサクのクッキー)と大きく異なります。

とはいえ、個人によってどの単語がどちらを示しているかが異なるのがアメリカです。
9. flat / apartment(住まい)
| 単語 | 米国英語の意味するもの | 英国英語が意味するもの |
| apartment | アパート/マンション | 高級マンションのイメージ |
| flat | (住まいを意味するためには使わない) | アパート/マンション |
英国で apartment を使うと「高級マンション」というイメージを持たれることがあります。
⚠️ 日本の「マンション」
少し脱線しますが、日本の「マンション」という言葉がアメリカで使われる英語の単語に直接対応するわけではないため、誤解が生じやすいポイントです。
上記を表をおさらいすると、
- イギリス英語:
flatを使うと、日本でいう一般的な「マンション」や「アパート」のイメージに近いです。 - アメリカ英語:
apartment(アパートメント)- 賃貸物件(借家)の集合住宅を指すのが一般的です。日本の「アパート」や「賃貸マンション」のイメージに近いですが、豪華なものも含まれます。
condominium(コンドミニアム、略してcondo)- 分譲物件(持ち家)の集合住宅を指します。日本の「分譲マンション」のイメージに最も近いです。
🇺🇸 アメリカで「Mansion」は「豪邸」を意味する
アメリカ英語で「Mansion(マンション)」という単語を使うと、これは**「大邸宅」「豪邸」という意味になり、集合住宅ではなく一戸建ての非常に豪華で大きな家**を指します。
| 日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 | 意味・ニュアンス |
| 一般的なマンション | Apartment / Condo | Flat | 集合住宅 |
| 豪華なマンション | Luxury Condo / Penthouse | Apartment / Luxury Flat | 豪華な集合住宅 |
| 豪邸 | Mansion | Mansion | 大邸宅、非常に大きな一戸建て |
豪華な集合住宅を指す言葉
アメリカのニューヨークなどで見られるような、いわゆる超高級タワーマンションの住戸を指す場合は、以下のような表現が使われます。
- Luxury Condo/Apartment(ラグジュアリー・コンド/アパートメント)
- High-rise(高層ビルにある住居)
- Penthouse(ペントハウス:最上階付近の豪華な住戸)
したがって、アメリカで「I live in a mansion.」と言うと、「私は豪邸に住んでいる」という意味になり、日本の一般的な「マンションに住んでいる」という意味にはなりません。
📋 そのほかの差もまとめてチェック
一覧にすると、単語の世界が一気にクリアになります。
| アメリカ英語 | イギリス英語 | 意味 |
| elevator | lift | エレベーター |
| truck | lorry | トラック |
| faucet | tap | 蛇口 |
| diaper | nappy | おむつ |
| garbage | rubbish | ゴミ |
| sneakers | trainers | 運動靴 |
| stroller | pram | ベビーカー |
| math | maths | 数学 |

知り合いのアメリカ人が3年間ロンドンに住むことになって、里帰りの際お話を聞くと、真っ先に「単語が違うから何回恥かいたはわからない」と言ってました。
✍️ スペルが違う代表パターン(覚えると一気に楽)
アメリカ英語とイギリス英語のスペル差には明確なパターンがあります。それを覚えてしまえば、ほとんど迷いません。
1. -or / -our(color / colour)
アメリカは -or、イギリスは -our を使います。
color(米)/colour(英)favorite(米)/favourite(英)behavior(米)/behaviour(英)
アメリカはスペル改革で簡略化したので -or が主流です。
2. -er / -re(center / centre)
center(米)/centre(英)meter(米)/metre(英)
映画館の theatre もイギリスでは一般的です。
3. -ize / -ise(realize / realise)
realize(米)/realise(英)
ただし、イギリスでも -ize が受け入れられている場面もあり、特にオックスフォード大学出版局など一部のアカデミックな分野では -ize が使われることもあります。
4. 子音の重ね方(traveling / travelling)
traveling(米)/travelling(英)canceled(米)/cancelled(英)
イギリスは子音字を重ねて読みやすさを保ちます。
🗣️ 発音もセットで違うもの
単語と発音がセットで変わる典型例も軽く紹介します。
| 単語 | アメリカ英語(米:トメイロウ) | イギリス英語(英:トマートウ) |
| tomato | トメイロウ | トマートウ |
| privacy | プライバシー | プリバシー |
| schedule | スケジュール | シェジュール |
| vitamin | ヴァイタミン | ヴィタミン |
このあたりは「映画とニュースで違う発音が飛んでくる代表」です。
✅ 中級者が意識すべきポイント(勉強のコツ)
単語の違いを学ぶときに、「全部暗記しなきゃ…」と思う必要はまったくありません。ポイントは次の4つです。
- 公教育の英語は “多様な英語” を許容している日本の学校で使われる教材や検定試験では、特定の国(米・英)に偏らず多様な英語が許容されています。どちらか一方を「基準」とするわけではありません。
- 海外ドラマ・ニュースでは混在して登場するNetflixなどを観れば、アメリカ英語とイギリス英語が混ざって聞こえます。どちらも理解できることが重要です。
- IELTS・ケンブリッジ系の検定はイギリス英語色が強いスペルだけでなく、holiday や flat などの語彙もよく出ます。これらの試験を受ける場合は特に意識しましょう。
- 背景知識を持つだけでリスニング理解が爆上がりするchips = フライドポテト、pants = 下着など、文化差を知っているだけで、意味を取り違えなくなります。
「暗記する」というより “違いの仕組みを知る” が重要です。
📚 まとめ|単語の違いを知ると世界が二つ見える
アメリカ英語とイギリス英語の違いは、単語・スペルのような“表層”から、文化の違いまで深くつながっています。
pantsとtrousersの差chipsとcrispsの食文化holidayとvacationの価値観center/centre、realize/realiseのスペル差
これらは「どちらが正しい」という話ではなく、英語がそれぞれの文化の中で独自に発展してきた結果です。
中級者の方がこうした違いを知ると、海外ドラマのセリフがよりクリアになり、ニュースの英語も聞き分けやすくなります。
単語の違いを理解したら、次はぜひ「文法・表現の違い」にも挑戦してみてください。単語以上に奥深く、英語の世界がさらに立体的に見えるようになります。



