テレビ・ラジオコメンテーター、講演活動、
バイリンガルブロガーとして活躍されている
アン・クレシー二さん。
2023年9月に『なぜ日本人はupsetを必ず誤訳するのか』という
日本人ならぐさっとくるようなタイトルの本を出版されました。
もしあなたに心当たりがあるのなら
ぜひ手に取ってみてください。
この書籍は
なぜ日本人がupsetを必ず誤訳するのかの
原因を説いているのではなく、
こんな意味でも使えるんだよ、と
日常生活に転がっている例を使って
解説しているもの。
アメリカ人でありながら
日本の大学で言語学准教授という
ごつい肩書きのある
著者ですが、
個性的なアプローチで
自然な英語表現を紹介しています。
英語学習者さんには
たいへんおすすめな書籍。
面白いので一気に読めますよ!
すぐに使えるものばかり
紹介してあるので
次に英語をしゃべる時使ってみよう、と
ワクワクするはずです。
本書の概要
日本在住歴23年のアメリカ人(2023年現在)が日本語で説明
2023年現在日本在住歴23年のアメリカ人
北九州市立大学准教授の
アン・クレシー二さんが
ネイティブが使う自然な慣用表現だけでなく
ネイティブスピーカーだからこそ分かる
意味合いの違いやバリエーション、
知っておきたい背景などを
わかりやすく紹介しています。
- chapter1ネイティブ感覚で使いこなす基本動詞
会話力アップにつながるmean/run/loveなどを解説
- chapter2意味の幅が広すぎて要注意な訳しにくい英語
upset/stuff/worthなど
- chapter3相手に誤解されないために知っておきたい英文法
had better/What are you studying?/Me, tooなど
- chapter4頭を柔らかくして考えたい英語に訳しにくい日本語
さすが!/アイドル/頑張るなど
- chapter5今すぐ使ってみたくなるクールで便利なSNS英語
check out/viral/Kなど
著者
言葉の達人の父親を持つ言語学者
本書にも記してあるように
著者のアンちゃん(失礼でしたらすみません、でもこのように呼ばせてください)のお父さんは
たくさんの書籍も執筆された大学の教授。
※本書では「教員」と紹介されています。
幼い頃お父さんからの
言葉のクイズで育ったおかげで
彼女も言語に対して強い関心を持ち、
大好きになったそうです。
日本語能力試験1級
アンちゃんは日本語能力試験1級保持者。
日本国内及び海外において、
日本語を母語としない者を対象として、
日本語能力を測定し、
認定することを目的とした試験のこと。
英語学習者にとっての
TOEFLやIELTSのようなものです
日本語能力試験1級が
どれくらいすごいかというと、
日本人の合格率が34%。
アンちゃんは帰国子女でも、
ご両親が日本語を母語にする人でもなく
ここまで日本語を習得した人です。
語学学習者としてもとてもinspiringな人!
こんな人におすすめ
- ネイティブスピーカーが使う自然な表現を身に付けたい人
- ネイティブスピーカーとガチで交流がある・してみたい人
- 微妙な意味合いの違いを学びたい人
- 海外ドラマ、特にsitcomを理解したい人
- これから留学・英語圏で生活をする人
少数派だとは思いますが、
これから留学を控えている人や英語圏に引っ越す人に
強くおすすめしたい一冊です。
とりしまが笑い転げた秀逸な爆笑例文3選
take 〜 for granted
take 〜 for grantedは試験にもよく見かける
「〜を当たり前に思う」という意味。
けれど、アンちゃん(ネイティブスピーカー)は
「〜を当たり前に思う」だけでは
物足りないと解説。
例えば、アメリカでは奥さんが夫に(逆もあるかも)
こんなことをよく言う。・You are taking me for granted!
この発言のニュアンスを日本語にすると、
本書より
「あなたは、私がずっとそばにいていろいろしてあげることを当然と思っていて、
私の存在に感謝していない!」
という意味になる。
「私の存在に感謝していない」まで
必ず含まれるんですよね、ここ。
(ああ、耳が痛い💦)
settle
settleは「定住する」「解決する」など
いろいろな日本語があてられますが、
コアにあるのは「おさまる」です。
対誰かではなく、一人で妥協する時は
compromiseではなく
settleを使います。
I wanted to marry Brad Pitt, but since he wasn’t available, I settled on my husband.
(ブラッド・ピットと結婚したかったが売却済みだったので、妥協して今の夫にした)
本書より
「売却済み」「彼氏・彼女持ち」を
not availableと表現するのもとても自然です。
募集中なら
I’m available.です
こんな例文出す?って笑っちゃいました。
stuff
「詰める」という動詞で知られるstuff。
ネイティブは
正式に名前がわからない時や思い出せない時の
「あれ」「それ」「やつ」を
「stuff」と言います。
当てはまる英単語は、
本書より
one、 thing、 thingy、 doohickey、 whatchamacallit、 thingamajig、 thingamabobなど、
たくさんある
これを知っているのと知っていないのでは
会話の進みがかなり変わります。
(だって向こうも物の名前がわかんないから)
whatchamacallitってどういう意味?と質問したら
どうなるかお分かりですよね?
とりしまがよく耳にしたのは
thing、 thingy、 whatchamacallitです。
※whatchamacallitの発音は「ワッチャマコーレッ」
とりしまの考察
言語だけでなく背景にある文化もよく研究されている
言語だけでなく背景にある文化もよく研究されていて、
解説が
ところどころに
散りばめられています。
言語を深く学んでいく時
文化や時代背景も知っておくことが重要。
アンちゃんの仏教に対する興味が
少しふれられていて、
日本人でも知らないようなことが
説明してありました。
日常に使っている日本の寛容表現の背景には
仏教があるんです。
食事の前の「いただきます」を「Let’s eat!」は
仏教的観点からは腑に落ちない訳、とアンちゃん。
はしばしに見えるアンちゃんのひととなり
各チャプターの始まり方は、
これから解説される単語や表現にまつわる
ちょっとしたお話から始まります。
語調はビシッとしているのですが、
どこかに優しくてやわらかいものがあって、
アンちゃんの人間性が
解説するひとつひとつの言葉を通じて
感じ取ることができます。
北九州市立大学の准教授でいらっしゃるのに
「教論ちっく」な表現はなく、
自分もいち言語学習者というhumbleな立ち位置を
いつも持っているスタンスが
とても好印象でした。
例文が日常生活に密着しているものばかり
例文はおそらく
アンちゃんが25年日本に住んで
出会したこと、思ったことが
挙げられているような印象を持ちました。
彼女が興味を持っていること、
生活や仕事を通して起こる会話から
連想される例文を通して
あなたのような英語学習者さんによくある間違いや
アンちゃんが感じる
「そうじゃない」や「しっくりこなさ」や
「ネイティブはこう言うんだよ」が
愛嬌たっぷりの博多弁を交えたかみ砕いた表現で
解説されています。
ニュアンスの違いが明確に解説してあるので
「こういう風に説明すればいいんだな」と
とりしまも学びました。
意味わかるけど、説明がむずいってありますよね。
アンちゃんはそこをドンピシャで解説しています。
少し読者の年齢層を選ぶかも
紹介してある例文や表現は
ちょっと若い世代向けかな?とも思いました。
読者もネイティブの使うスラングや自然な表現を
求めているので
そうなるのは仕方がないかもしれません。
けれど多くの例文は日常会話で頻繁に
耳にするものばかりです。
例文集なので「文法参考書」ではない
本書では、文法用語は出てきませんし
例文の文法的構成の説明もありません。
例えば、take 〜 for grantedの〜は名詞形だよ、と
記されていないので、
他の例文で動名詞があてられているのに
気づく必要があります。
イラスト0
ここでアンちゃんが「ガイジン」だと思いました。
とりしまも日本の書籍を見るたびいつも思うのが
イラスト、図解が非常に多いこと。
本書にはイラストがありません。
洋書を読む人はご存知だと思いますが、
外国の書籍にはイラストほぼないんですよね。
アンちゃんの解説や例文はとても身近で
わかりやすいので
図解はなくても大丈夫だとは思いますが。
まとめ
いかがだったでしょうか?
ネイティブから学ぶ、ということで
英語を場合に応じて
もっとていねいに使っていくことが
できるようになります。
この本は英語学習初心者さんには
少しハードルが高いかもしれません。
けれど、
英語学習をそこそこやってきたけど
どうもネイティブの表現がわからない人には
ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
オンライン英会話のフリートークセッションで
日常生活の中で起こるさまざまな
「ありきたり」なことを話すために
すぐ使えるものばかり!
オススメです!
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