USCPA(U.S. Certified Public Accountant)とは、米国各州が認定する公認会計士資格です。
日本の公認会計士とは異なり、独占業務の範囲は異なりますが、その専門性の高さと国際的な通用性から、キャリアアップを目指す人々の間で非常に注目されています。
この資格は、会計や財務のプロフェッショナルとしての知識を証明するだけでなく、グローバルな舞台で活躍するための強力なパスポートとなります。
USCPAは、会計士としてのスキルを証明するだけでなく、高い英語力と国際的なビジネスセンスを兼ね備えていることの証でもあります。グローバル化が進む現代において、その価値は年々高まっています。
USCPAの受験資格と日本での受験

「日本に住んでいるけど、USCPAは受験できるの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。結論から言えば、日本にいながらにしてUSCPAの資格取得は可能です。
1-1. 受験資格要件の詳細
USCPAの受験資格は、出願する州によって大きく異なります。そのため、まずはご自身の学歴や取得単位数に最適な州を選ぶことが最初のステップです。
- 学位要件:ほとんどの州で4年制大学の卒業(学士号以上)が求められます。
- 単位要件:取得した単位数が重要になります。具体的には、会計単位とビジネス単位がそれぞれ一定数以上必要です。例えば、会計単位は24~30単位、ビジネス単位は24単位といった要件が一般的です。日本の大学のカリキュラムだけでは単位が不足することが多いため、資格専門予備校などが提供する単位取得プログラムを利用するのが一般的です。
単位要件が厳しくない州として人気なのは、ワシントン州やモンタナ州などです。しかし、受験資格だけでなく、ライセンス(CPAとしての登録)取得要件も考慮して州を選ぶ必要があります。多くの州ではライセンス取得に150単位が必要となります。
1-2. 日本で受験できる方と受験までの流れ
日本からでもUSCPA試験は受験可能です。
- 日本で受験できる方:
- 日本国籍をお持ちの方
- 日本の永住権をお持ちの方
- 日本に長期滞在中の外国人の方(「在留カード」をお持ちの方)
- 米国国籍をお持ちの方
- 受験までの流れ:
- 出願州の選定と学歴審査:受験する州を決め、日本の大学の成績証明書などを指定の審査機関に送付して単位評価を受けます。
- 受験料の支払いと受験票(NTS)の発行:単位が認められたら、科目ごとに受験料を支払い、受験票(NTS)を発行してもらいます。このNTSには6ヶ月の有効期限があるため、計画的な学習が不可欠です。
- 試験予約:NTSに記載された情報をもとに、プロメトリックのウェブサイトで試験日時と会場(東京または大阪)を予約します。
USCPAの難易度と効果的な勉強法

USCPAは「日本の公認会計士試験よりは易しい」と言われることがありますが、それはあくまで相対的な評価です。すべてが英語で行われるため、英語力は不可欠であり、決して簡単な試験ではありません。
2-1. 難易度と合格率
- 合格率:全体の合格率は**約50%**ですが、日本人受験者の合格率は、英語のハンディキャップもあってこれより低い傾向にあります。科目ごとに見ると、難易度や学習範囲の広さに違いがあります。
- TOEICの目安:一般的に、TOEICのスコアで700点以上が目安とされています。特に、専門的な会計用語や監査用語を英語で理解し、長文問題を読み解く力が求められます。単に単語を覚えるだけでなく、文脈を捉える力が重要です。
2-2. 勉強時間と学習計画の立て方
- 総学習時間:合格までに必要な総勉強時間は、約1,000〜1,500時間が目安です。
- 期間:働きながら学習する場合、1年半〜2年程度の期間で合格を目指すのが現実的です。
- 具体的な学習計画:
- インプット期間:まず、専門学校の講義やテキストを使って基礎知識を固めます。会計知識がない方は、ここでしっかりと基礎を築くことが大切ですです。
- アウトプット期間:知識が定着したら、問題演習に移行します。USCPAは「問題演習が鍵」と言われるほど、過去問や模擬問題の繰り返しが重要です。解けない問題があっても気にせず、まずは3周することを目標にしましょう。
- 弱点克服:間違えた問題や理解が浅い論点に焦点を当てて、再度テキストに戻るというサイクルを繰り返します。
- スキマ時間の活用:通勤時間などにアプリでMC(Multiple Choice)問題を解いたり、音声講義を聞いたりすることで、効率的に学習時間を確保できます。
USCPAの試験科目(新試験制度)

2024年1月からの新試験制度では、「必須3科目+選択1科目」の計4科目構成となりました。試験はすべてコンピュータ形式で、モニター画面に出題される問題に対して解答を入力します。実務レベルの基本的な問題が、広く浅くまんべんなく出題されるのが特徴です。
3-1. 必須科目(Core Section)
受験者全員が必ず受験する科目です。
- FAR(Financial Accounting and Reporting):
- 学習範囲:企業会計、非営利組織会計、政府会計など、会計に関する広範な知識が問われます。最も学習ボリュームが多く、USCPAの基礎となる科目です。
- 攻略法:概念の理解に加え、計算問題も多く出題されるため、何度も問題を解いてパターンを身につけることが重要です。
- AUD(Auditing and Attestation):
- 学習範囲:監査の手続き、内部統制、公認会計士の職業倫理などが含まれます。監査報告書の種類や、リスク評価の手法など、専門的な知識が求められます。
- 攻略法:暗記だけでなく、なぜその監査手続を行うのか、といった背景を理解することが大切です。
- REG(Regulation):
- 学習範囲:個人の所得税、法人の連邦税、商法(契約法、会社法など)が範囲です。米国特有の法律知識が多く、日本人には馴染みが薄いかもしれません。
- 攻略法:暗記要素が強いですが、単に暗記するのではなく、全体の体系を把握することで理解が深まります。
3-2. 選択科目(Discipline Section)
以下の3科目から1つを選んで受験します。自身の興味や将来のキャリアパスに合わせて選びましょう。
- BAR(Business Analysis and Reporting):
- 学習範囲:主に管理会計、財務分析、経営意思決定に関する問題が出題されます。CFO(最高財務責任者)を目指す人や、企業分析に興味がある方におすすめです。
- 攻略法:企業評価や資本コスト計算など、比較的計算問題が多い科目です。
- ISC(Information Systems and Controls):
- 学習範囲:ITガバナンス、サイバーセキュリティ、情報システムの統制など、IT関連の知識が問われます。IT監査や情報システム監査に関わりたい方におすすめです。
- 攻略法:会計知識に加えて、IT分野の専門用語や概念の理解が必要です。
- TCP(Tax Compliance and Planning):
- 学習範囲:税法に特化した科目で、納税義務や税務計画について深く掘り下げます。国際税務や法人税務の専門家を目指す方におすすめです。
- 攻略法:REGの知識をさらに深める内容です。
💡豆知識:
一般的に、REGとTCPは他の科目と比べて合格率が高い傾向にあります。
まとめ:USCPAが拓く未来のキャリアパス

USCPAの資格は、あなたのキャリアを大きく広げる強力なパスポートになります。
4-1. 広がるキャリアの選択肢
- グローバルなキャリア:外資系企業や日系企業の海外部門、海外の会計事務所など、活躍の場は世界中に広がります。米国現地のCPAファームで働くことも夢ではありません。
- 専門性の深化:公認会計士としての専門知識を活かし、経理、財務、経営企画、内部監査など、企業の中核を担う部門で重宝されます。
- 独立・起業:コンサルタントとして独立したり、自身のビジネスを立ち上げる際にも、専門知識が大きな強みとなります。
4-2. 英語学習との相乗効果
USCPAは、専門的な英文を読み解く力や、英語で思考する力を身につける絶好の機会です。合格までの学習過程を通じて、ビジネスや会計に特化した生きた英語力を養うことができます。USCPAの学習は、単なる資格取得にとどまらず、国際的な舞台で通用するビジネスパーソンとしての英語力を磨くことにも直結します。
USCPAは、専門性を高め、国際的なキャリアを目指すための素晴らしいステップです。ぜひ一歩踏み出して、未来の選択肢を広げましょう。